同じカレンダーでもこんなに印象が変わるものなのか。Moleskineはアプリを出し始めた頃あまり魅力がなかったのですが、日に日に改善を重ね「美しいとは何か」を提案するレベルに達しています。シンプルな構造に機能美が備わっている。
「アプリ美学」というジャンルがあるなら、これは年表に載るんじゃないだろうか。ボタンや文字で誤魔化さない。操作がそのままデザインである世界。
TimePage
Moleskineが去年5月に出したカレンダーアプリ。有料だったのですが、3日前から「メンバーシップ制」という購読モデルに切り替わりました。一年契約で1,350円。7日間の試行期間があり、更新しなくても純正カレンダーのビューアとして使えます。
カレンダー画面
カレンダーの画面で上下にスワイプすると前後の月に移動します。右からスワイプすると年間カレンダー、左からだと週間表示になります。直感的なインターフェース。
入力画面
週間表示で日をタップすれば詳細表示に変わり、そこで下方向にスワイプすれば、イベントの入力画面。時刻の帯をスライドして設定し、イベント名を書き込めば場所やノートを追記する画面に移ります。入力が途切れないデザインになっている。
ワード・コレクター
日記って書くことがないんですよね。イベントばかりの華やかな生活は送っていません。そうなると「日記」の概念を考え直す必要がある。学級日誌ではないのだから、起こった出来事を書く義務はない。そうではなく「新しく知った言葉」を残す場にしていく、と。
そう方針を変えると、意外と書くことが見つかります。知らない言葉や概念はこの地上に溢れ、毎日出会います。それをカレンダーに書き留める。これを繰り返すと時間の加速を止めることができます。昔から知っているように思っていた用語や人名が、意外と一年前くらいの出会いだったりします。「今年もあっという間に過ぎた」と思いがちですが、そんなに早くない。一日一日積み重ねているものがある。目を覚まして生きている。
CalMemo
とはいえ、Moleskineはビューアでも良いかな。カレンダーを使って記録する。このTextwellアクションは、カーソル行や選択範囲をカレンダーに保存します。
まとめ
サブスクリプション制を採用するアプリが増えてきました。無料で提供しないと試してもらえない。買い切りだと、バージョンアップが無償になってしまいメーカー側がジリ貧になる。購読制は苦渋の選択ではなく、アップルが提供するAppStoreの持つ構造的な制約ですね。パッケージ販売ではなくなったことで、メーカーがどう存続するか模索している。
Moleskineの「メンバーシップ制」は、紙の手帳なら毎年買い替えが起こることの外挿です。物理世界のメタファーを無形のアプリに転用している。これが通用するかどうかは今後の展開次第。もしかしたら一年後にメンバーシップ制を取りやめるかもしれない。
アプリはバーチャル世界での生き物です。どんなモデルを採用すればそこで持続できるか。誰にもわかりません。わからないのに、大元のアップルはOSをコロコロ切り替え、動かないアプリを作る。環境の気まぐれな変化が美を生み出す。その不思議な生態系。